【みんなの体操】

−創作の目的−  
学校での体操と言うと、指揮者の号令に従って、体操の体形をつくり、「1,2,3,4」というかけ声に合わせて行われることが多い。
しかもそこでは、一つ一つの運動を効果あらしめるために、運動の「型」を指導することが多いが、ときとすると「型」の指導に力が入りすぎて「楽しく運動しながら、知らず知らずのうちに体をほぐす、心肺機能を高める、体を整える」という本来の目的から遠ざかってしまうことが多い。
また、運動会(体育祭)などで展開されるそれは、統一感・統率感も併せて醸し出そうとする配慮から、「全体の動きを揃える」ことに配慮が傾き、運動本来の意味や目的からそれてしまうことも多い。
そこで、踊るように無理なく楽しく体を動かしながら、自然に体をほぐす・整えるといった運動の目的が達成できるようにと考えてつくったのが「茨大附小みんなの体操」である。
1986年(昭和61年)のことである。

     
−創作の意図−  
 
この体操のアイディアを創出したのは、当時の体育主任である。
全校児童が朝礼台の前に集合・整列し、体操の体形に広がり、体操を行い、もとの位置に集合して体操全体が終わるまでのすべてを「体操」ととらえ、しかもそれらのすべてを新たに創作する音楽に合わせて行いたい、というものである。
ファンファーレの合図で『体操が始まる』ことを知った子どもたちは、その後に続く軽やかな音楽に乗ってスキップしながら朝礼台の前に集合・整列し、音楽に合わせて体操の体形に広がり、音楽に合わせて跳んだりはねたりしているうちにいつの間にか運動を行い、さらに音楽に合わせてもとの位置に集合し、スキップをしているうちに列が整い、「気をつけ」の姿勢に戻ることができるような一連の動きとして体操を考えたい、というのがその趣旨である。

こうすることで、無粋な「号令」を排除しつつ、体を動かす楽しさを味わわせ、しかも運動の効果をあげることができるであろうとする意図から生まれたものである。

     
−創作の経緯−  
 
1.運動の内容・順序の検討
  体育主任が児童の代表(運動委員会)と数度にわたる話し合いを行い、どんな運動をどんな順序で行えばよいかを検討。
2.音楽づくり
  音楽主任の私が、動きを無理なく引き出せそうな音楽づくりをする。
作曲と編曲に使用したのは、YAMAHAのシーケンサー「QX1」と音源ユニット「TX816」、そしてリズムマシーンの「RX7」である。8トラックしか使用できなかったものの、当時としては贅沢なシステムだったのである。
  一つ一つの動きをうまく引き出せそうなモチーフをつくり、オーケストレーションし、ある動きから次の動きを予感させるブリッジ部分に配慮した。
  さらに、体操の始めから終わりまで「運動することが楽しい」という実感をもって展開できるよう、そして集合や整列も誰かの指示でしているのはなく、自分たちの意志でしているのだという自負や誇りを味わい愉しむことができるようなものとしたいという意図をもって創作した。
3.検討と周知  
      音楽が完成した後、体育主任と児童代表が実際に音楽に合わせて体操し、確認後全校児童にそれを広めていくという手順で全校に紹介。
何度かの練習を重ねて、秋の運動会で保護者にも公開をした。
       
20年後のいま聴き返してみると、作曲・編曲の拙さ、機器の扱いの拙さが目立つ。パート数に制限があるからというばかりでなく、デジタル機器を思い通りに使いこなすことができず、録音技術にしても未知の部分、不慣れな部分が多く、それがサウンドによく表れている。
いまや、これ以上のことが安価で高機能な機器とソフトで、しかもより効率的に表現できることを考えると、隔世の感がある。
恥ずかしいことではあるが、当時のありのままの音楽をここに公開する。
というのも古いカセットテープを整理していて、当時の録音を見つけることができたからである。
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